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活用事例

5,000μW/cm²以下の紫外線強度が蛍光浸透探傷試験に最適な理由

照射する紫外線が強ければ強いほど、蛍光物質は明るく発光します。非破壊検査においても、紫外線強度が高いブラックライトによる観察は、弱いブラックライトよりも鮮明なきず模様を観察できます。

一方、当社で販売するブラックライトの半数近くは、5,000μW/cm²以下の紫外線強度です。より強力な紫外線を照射するブラックライトも扱っていますが、数は多くありません。他社においても同様で、非破壊検査用途では、5,000μW/cm²以下の紫外線を照射するブラックライトが多く販売されています。
なぜ、強い紫外線の方が鮮明なきず模様を観察できるのにもかかわらず、5,000μW/cm²以下の紫外線を照射するブラックライトが非破壊検査用として多く販売されているのでしょうか?
このページでは、5,000μW/cm²以下の紫外線強度が非破壊検査(蛍光浸透探傷試験)に適切な理由を説明します。

紫外線強度イメージ

5,000μW/cm²以下の紫外線強度が蛍光浸透探傷試験に最適な理由

蛍光浸透探傷試験および蛍光磁粉探傷試験では、ブラックライト照射時の試験面の紫外線強度が1,000μW/cm²以上となることが、様々な規格で要求されています。なぜならば、これを満たさない場合、紫外線が弱いためにきず模様を見落としてしまう可能性があるからです。
一方で、照射する紫外線が強ければ強いほど、蛍光物質は明るく発光します。このため、強力な紫外線を照射するブラックライトの方が、高性能で検査に適していると一般的には考えられています。
しかしながら次の2つの規格では、蛍光浸透探傷試験において、試験面の紫外線照度が5,000μW/cm²を超えてはならないと記されてます。

JIS Z 2323:2017 非破壊試験 - 浸透探傷試験および磁粉探傷試験 - 観察条件
ISO 3059:2012 Non - destructive testing - Penetrant testing and magnetic particle testing - Viewing conditions

なぜ、試験面の強度が5,000μW/cm²を超える高レベルの紫外線を照射してはいけないのでしょうか? それには2つの理由があります。
1つは紫外線による蛍光物質の劣化です。強力な紫外線を長時間にわたり照射すると、蛍光物質が劣化し、紫外線に対する反応が弱くなる場合があります。以下の写真は、5,000μW/cm²と20,000μW/cm²の照度で、それぞれ30分間連続照射した結果を比較したものです。20,000μW/cm²で照射した箇所は、蛍光剤の反応が弱くなっていることが分かります。

紫外線照射強度の比較画像

もう1つの理由は、ぎらつきの防止です。非破壊検査用のブラックライトは、365nmを中心とする320~400nmのUV-A領域の紫外線を照射します。一般的に紫外線は人間の目で見ることができないと言われていますが、当然個人差・年齢差があり、390nmや380nmの紫外線を知覚できる人もいます。それらの人にとって、高レベルの紫外線照射により生じる観察面のぎらつきは、きずを見えづらくし見逃してしまう恐れがあります。

強力な紫外線を照射することで、確かに鮮明なきず模様を観察することができます。しかし同時に、蛍光剤を劣化させることで紫外線への反応を弱め、また観察面にぎらつきを発生させることで、適切なきず模様を観察することができなくなる可能性があります。
試験面が5,000μW/cm²を超える高レベルの紫外線を照射することは避ける必要があり、当社を含め非破壊検査用として販売されているブラックライトの多くが38cm(40cm)距離で5,000μW/cm²以下の紫外線強度となっている理由もこのためです。38cm距離で5,000μW/cm²を超える高レベルな紫外線を照射するブラックライトを使用する際は、照射距離を離すことで試験面の強度が5,000μW/cm²を超えないよう調整する必要があります。