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活用事例

JIS Z 2323:2017(非破壊試験-浸透探傷試験および磁粉探傷試験-観察条件)の説明

JIS Z 2323:2017(非破壊試験-浸透探傷試験および磁粉探傷試験-観察条件)は、ISO 3059-2012を基に作成された日本工業規格です。
ISO 3059:2012 Non-destructive testing -- Penetrant testing and magnetic particle testing -- Viewing conditions

JIS Z 2323:2017は、浸透探傷試験および磁粉探傷試験において、観察を行う際の照度と紫外線強度、そしてそれらを測定するための照度計および紫外線強度計について主に規定しており、次の8つの項目から構成されています。

  1. 適用範囲
  2. 引用規格
  3. 用語および定義
  4. 安全予防措置
  5. 色調コントラストによる方法
  6. 蛍光による方法
  7. 試験技術者の必要視力
  8. 校正

ここでは、JIS Z 2323:2017(非破壊試験-浸透探傷試験および磁粉探傷試験-観察条件)の項目4~8について、分かりやすく説明します。

4 安全予防措置

この項目では、ブラックライト使用時の安全予防措置について記載しています。
強い紫外線を放射するブラックライトや、ブルーライトを含む白色LEDによる可視光を人体に長期間照射すると、皮膚にアレルギー、重度の日焼け、皮膚の早期老化・がん、目の機能障害などの健康被害を引き起こす可能性があります。このため、人体が受ける紫外線の量は、最低限に抑える必要があります。

ー 解説 ー

強い紫外線を放射するブラックライトや、ブルーライトを含む白色LEDによる可視光は、皮膚にアレルギー、重度の日焼け、皮膚の早期老化・がん、目の機能障害を引き起こす可能性があります。このため、使用時は必ず防護服・防護メガネを着用し、人体への影響を最小限に抑えなければなりません。

水銀ランプ等の光源がLED以外のブラックライトは、人体に危険な波長 330nm 以下の紫外線も放射しており、黒いフィルターを通すことにより、波長330nm以下の紫外線をカットしています。しかし、フィルターの損傷等により割れが発生すると、その隙間を通して危険性が高い330nm以下の波長が直接人体にふれる恐れがあり、特に注意する必要があります。ただし、現在普及している非破壊検査用のLEDのブラックライトは、365nmを中心とする紫外線を発しているため、330nm以下の紫外線を気にする必要はありません。

5 色調コントラストによる方法

この項目では、染色浸透探傷と染色磁粉探傷において、目視できずを観察する際の光源の色温度と照度を規定しています。

ー 解説 ー

光源

目視による観察は、昼光、または人工の白色光のいずれかの光源の下で行います。
人工光を用いて観察する場合、色温度は2,500Kを下回ってはいけません。推奨の色温度は3,300K以上です。人工光の色温度は、照明の製造業者が提供する情報を参照します。

測定

照度は、照度計を用いて使用環境下で測定します。使用する照度計の応答特性は、明るい環境においてのヒトの目の感じ方(明所視標準比視感度)に似たものでなければなりません。[JIS C 1609-1の5.3(可視域相対分光応答度特性)による]

明所視標準比視感度
測定に使用する照度計は、明所視標準比視感度のピーク波長と類似していることが要求されています。

要求事項

試験面の照度は、余剰浸透液の除去処理では350lux以上、観察時には500lux以上必要です。

  照度
余剰浸透液の除去時 350lux以上
試験時 500lux以上

サングラスなどの遮光保護具は視界が暗くなるため、観察の際に使用する事は禁止されています。ただし、白のバックグランドや20,000lux以上の非常に明るい日差しの場合は、サングラスなどの遮光保護具を使用しても良いですが、きずを見逃す恐れがあるため注意が必要です。

6 蛍光による方法

この項目では、蛍光浸透探傷および蛍光磁粉探傷で使用する、ブラックライトの波長、紫外線強度(放射照度)、照度および、紫外線強度(放射照度)と照度を測定する紫外線強度について規定しています。
蛍光浸透探傷および蛍光磁粉探傷では、A領域紫外線を放射するブラックライト(紫外線探照灯)を用いてきずを観察します。蛍光浸透液・蛍光磁粉液は、波長365nmの紫外線に最も反応するように設計されているため、ピーク波長が365nmのブラックライトを使用する必要があります。また、紫外線強度(放射照度)が弱いときずを見逃す恐れがあるため、十分な強度が必要です。

ー 解説 ー

紫外線

ブラックライトの光源は波長が365nm±5nm、かつLEDの場合は半値全幅*が30mm以下のA領域紫外線光源を用いて、試験を行います。光源はすぐに安定しない場合があるため、試験前に安定状態にしておきます。

  LED光源 LED光源以外
紫外線 A領域紫外線 A領域紫外線
中心波長 365nm±5nm 365nm±5nm
半値全幅(FWHM) 30mm以下 -

半値全幅(FWHM)とは、スペクトロ分布図の、波半分高さの時の波長幅のことです。LED光源の場合は、中心波長が365nm±5nmかつ、この幅が30nm以下でなければいけません。

測定

きずの観察に必要な紫外線強度がブラックライトから放射されているか、下図に規定した応答特性をもつA領域紫外線強度計を用いて使用環境下で測定します。測定はブラックライトの出力が安定してから行います。なお、照度の測定は、「5 色調コントラストによる方法」に規定されている方法にて行います。

A 全ての波長において比応答特性は,105を超えてはならない。
B ピーク値は,波長355nm〜375nmの間とする。
C 波長313nmにおける値は、10%未満とする。
D 波長405nmにおける値は、2%未満とする。

要求事項

余剰浸透液除去時には、紫外線強度は少なくとも100μW/cm²(1W/cm²)以上必要で、照度(可視光)は100Luxより小さくなければいけません。
試験時の試験面の紫外線強度は、1,000μW/cm²(10W/cm²)以上必要で、かつ照度は20Lux以下でなければいけません。

  紫外線強度 照度
余剰浸透液の除去時 100μW/cm²(1W/m²)以上 100Lux未満
試験時 1,000μW/cm²(10W/m²)以上 20Lux以下

7 試験技術者の必要視力

この項目では、試験を行う技術者の視力について規定しています。

ー 解説 ー

試験技術者の視力は、非破壊試験を実施する上において十分であり、かつ、JIS Z 2305に規定する必要条件を満足しなければいけません。
JIS Z 2305:2013(非破壊試験技術者の資格および認証)の7.4(視力要求事項ー全ての資格レベル)では、近方視力および色覚について規定しており、近方視力についてはJaeger number1、もしくはTimes Roman N 4.5 又はそれに相当する文字の中の最小のものを、30cm以上離れた距離から読めることを要求しています。

Jaeger Eye Chart

8 校正

この項目では、紫外線強度計および照度計の校正について規定しています。
紫外線強度計および照度計は、試験面の紫外線強度(放射強度)および照度の正確な測定のための重要な計器で、定期的な校正が要求されています。

ー 解説 ー

紫外線強度計および照度計の特性は、国家標準又は国家標準にトレースされた標準器で校正を行い、その結果が仕様を満たさなければいけません。校正は、メーカーが推奨する頻度で行いますがこの期間は12ヵ月以内である必要があり、また校正結果は文書化する必要があります。

紫外線強度計および照度計のセンサーと本体が取り外し可能な場合、校正はセンサーと本体の組み合わせ行います。この時、実際に使用するセンサーとは異なる組み合わせで校正することは認められていません。また、計器を整備・修理した際には、校正の周期にかかわらず校正を行う必要があります。

*本ページの情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容について保証するものではありません。詳しくは、JIS Z 2323:2017を確認して下さい。